声明文『子どもたちの学ぶ権利と性の多様性を守るために – 那覇市議会での発言を受けて -』の公表について

このたび、てぃーだあみを含む複数の団体の呼びかけにより、下記の声明文を公表いたします。

(最終更新10月6日)


声明文『子どもたちの学ぶ権利と性の多様性を守るために – 那覇市議会での発言を受けて -』

 2025 年 9 月 12 日の那覇市議会において、ある議員から以下のような発言がありました。これらの発言に悪意があったと決めつけることはできませんが、いずれも当事者や専門家の知見とは大きく異なり、社会に大きな影響を与えるものであるため、丁寧に考える必要があります。

① 発言「トランスジェンダーの性自認は動画を見たりすることで社会的に伝染する」の問題

 「社会的伝染」という表現は、トランスジェンダーの存在をあたかも社会に広がってはいけない“有害な現象”のように扱うものです。そうした見方は、当事者の子どもたちが「自分は迷惑なのでは」と感じる要因となり、いじめや排除につながりかねません。実際に報道の後、SNSには否定的なコメントが見られています。私たちは、子どもたちが安心して自分らしく生きられる社会を築くために、こうした言葉の影響について冷静に検討する必要があります。

② 発言「トランスジェンダーの生徒には心の性別に基づく配慮よりも、心の傷を治療できる心理士を紹介すべきである」の問題

 国際的な医療指針では、「心の性を身体に合わせようとする矯正的な行為」は効果がないばかりか、深刻な苦痛をもたらすことが示されています。必要なのは「性自認を否定して治す」ことではなく、「安心して自己を表現できるように支える」ことです。実際、現在の医療や心理支援もそうした方向に基づいて行われています。議論の出発点は「治す」ことではなく、「支える」ことにあるべきではないでしょうか。

③ 発言「LGBT 理解増進法は不要であり、学校で LGBT 教育を行うことでトランスジェンダーが増える」の問題

 科学的に見て、教育によってトランスジェンダーが「増える」ということはありません。性自認や性的指向は教育で作られるものではなく、もともと多様性として存在しているものです。学校での教育は「増やす」ためではなく、すでにいる子どもたちが安心して学び、互いを尊重できる環境を整えるために行われます。また、「増えるのは問題だ」とする発想は、当事者を否定することにつながり、孤立やいじめを深刻化させる恐れがあります。

 今回のような発言は単なる一つの意見という枠を超えて、社会に差別や誤解を広げ、人権意識そのものを後退させかねない力を持ちます。性的マイノリティをめぐる課題だけでなく、県内における各団体・個人が取り組んできたハンセン病及び障がい者に対する差別、外国人へのヘイトスピーチ、のぞまない妊娠に関する困難など、多岐にわたる人権課題全般に影響しかねません。

 そこで、私たちは以下の 4 点を行動指針として表明します。
これらは、那覇市や教育委員会のみならず、市民・県民を含む社会全体で協働するべき課題だと考えます。


1.トランスジェンダーを否定的に扱う誤解を改めること
 私たちは、トランスジェンダーの人々を「異常」や「問題」とみなす誤った見方を改め、学校を含むあらゆる場で、性的マイノリティを含む全ての子どもたちが安心して学べる環境が守られるよう訴えていきます。

2.当事者の同意や理解を得ない「調査」や「暴露」を許さないこと
 私たちは、子どもたちの性の在り方が一方的に問いただされることがなく、安心できる教育現場が引き続き保たれることを望みます。

3.正しい知識を共有し、未来をひらく教育を推進すること
 私たちは、性的マイノリティに関する科学的で正しい知識に基づく教育や、成長と学齢に応じた性教育が行われることで、すべての子どもが自分らしく生きられるような教育活動を求めます。

4.「性の多様性を尊重する都市・なは」の精神を実現すること
 私たちは、2015 年に掲げられた「レインボーなは宣言」を今に活かし、差別や偏見のない社会を次世代に渡すため、互いに協力していきます。

 私たちは市民社会の一員として、対話と協働を通じてこの取り組みを広げていくことをここに宣言します。


【呼びかけ団体】 (順不同・10月4日付)

てぃーだあみ

沖縄から結婚の平等にYES!~YES!FOR MARRIAGE EQUALITY実行委員会Nu-jiCha

fufu-hug

沖縄ろうLGBTQ いるまんちゃー

NPO法人レインボーハートokinawa

沖縄性教育コミュニティKPTAS

基地・軍隊を許さない行動する女たちの会

新日本婦人の会沖縄県本部

エンパワメント・ラボ・沖縄

一般社団法人女性を元気にする会

NPO法人にじのはしファンド

一般社団法人ある

一般社団法人沖縄じんぶん考房

沖縄の教職員の働き方を考える会

沖縄県教職員組合

沖縄県教職員組合那覇支部

沖縄県高等学校障害児学校教職員組合

沖縄県歴史教育者協議会

沖縄県高等学校障害児学校退職教職員会

ジェンダーもんだいを考える会

多文化ネットワークfuふ!沖縄

ヒスパニック文化センター

沖縄カウンターズ

ヨルベ

沖縄県“人間と性”教育研究協議会

沖縄県退職教職員会

沖縄県教職員組合八重山支部

沖縄県教職員組合中頭支部

【賛同団体】(順不同・10月4日付)

一般社団法人ピンクドット沖縄

にじゆい

LGBTQ親コミュOKINAWA

How to SEI

フェミブリッジ沖縄

一般社団法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄

特定非営利活動法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい

沖縄生活指導研究会

沖縄県“人間と性”教育研究協議会

NPO法人沖縄県自立生活センター・イルカ

特定非営利活動法人沖縄NGOセンター

琉球沖縄歴史学会事務局有志

一般社団法人琉球わんにゃんゆいまーる

一般社団法人沖縄県社会福祉士会

こどもの権利ネットワークおきなわ

一般社団法人りあん

10ホールズオーケストラ

那覇市女性ネットワーク会議

ボイスオブチルドレン沖縄

沖縄人権協会

沖縄県憲法普及協議会

以上49団体